イギリスには民放テレビ放送があるが、日本やアメリカの民放とはまったくことなる思想のもとで発足した。日本での民放放送局は、番組スポンサーからの収入を主として経営されている。しかし、イギリスでは、番組のスポンサーになることはできない。番組と番組の間のコマーシャルの時間をスポット買いすることしかできないのである。スポンサーの意向によって番組の内容が左右されない制度作りがなされている。このDVDに収録されているような質の高いドキュメンタリー番組が制作され、放映されてきたのは、ジャーナリズムの伝統もあるが、そのような放送理念が制度化されていることにもよる。チャンネル4などは、実験的で教育的な番組を放送することが使命とされているので、BBCよりも「過激な」特集番組が放送されたりする。公共放送とは、民放と区別された国営放送をさすのではない。電波自身が public であり、電波に乗るものはすべて public broadcasting なのである。日本の放送人や政治家に、そうした発想を持つ人がいまどれくらいいるだろう。